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クロツバメの浮き雲ライフ

保護猫のこと、時々趣味を綴ります。

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野良猫に餌を与えている方に知ってほしいこと

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拝見したあるブログで積極的に野良猫に対し餌を与えている方の記事を見ました。同じ猫好きでも住んでいる地域や考え方によって、こうも猫に対する接し方が違うものかと驚きを隠すことができませんでした。

 

 

その方のブログは野良猫にそれぞれ名前をつけ、日々の食事を与えている光景を写真に撮って記事にするというものです。猫たちはかわいく、またかわいく見える上手な写真の撮り方をしていて多くの読者のいるブログでした。

 

 

 

ただ、ひとつ気になったことがありました。

 

どの猫もTNRのしるしである『さくら耳』になってはいないのでした。

 

 

この記事は野良猫に日常的に餌を与えている方に知っていただきたいことを箇条書きにしたものです。そして猫が直面している諸問題について、もっと知りたいという方のための記事でもあります。

 

 

※TNRとは『捕獲し、中性化し(不妊・去勢手術を施し)、もといた場所に放す』の意味です。

 

※さくら耳とは『不妊・去勢手術を受けたしるし』で、耳先をカットしてある状態のことです。

 

 

もくじ

 

 

猫の来歴

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猫はもともと野生でしか生息していなかった動物です。それを人間が【愛玩用】【使役用】に改良した【伴侶動物】です。ペットとして共に暮らすためであったり、ネズミなどの害獣から食料を守るなどの目的で野生動物から【野生】を取り去ったという過去は意外と知られていないものです。

 

伴侶動物とは - Weblio辞書

 

そして害獣対策として猫は街ぐるみで飼う動物という認識が広く定着していました。屋外で交尾をするなどして産まれてしまった仔猫はご近所さんに譲ったり、段ボール箱に入れて「どなたかもらってください」と書いて遺棄すれば貰い手が見つかるような平和な時代があったことは事実です。

 

 

ですが、今はどうでしょうか

 

 

「子猫が産まれたので1匹いかがですか?」と言える隣人が果たして何人いるでしょうか。段ボールに入れられた猫がカラスの餌食になったり、変質者の慰み者になったりという話を耳にしたことはないでしょうか。食うに困らぬ数のネズミはまだどこかにいるでしょうか。

 

誰にも拾ってもらえずそれでも何とか生き抜いた猫が【野良猫】として成長します。

 

しかし路上で生きることができた猫の多くが交通事故や冬の寒さなどの過酷な環境での生活に耐えきれず亡くなっているのが現実です。

 

たとえ生き延びたとしても近隣の住民による糞尿被害や騒音を訴えたクレームにより保健所に収容され『期限付きの命』を狭い檻のなかで終える猫は少なくありません。それが猫にとってどれほど悲しいことか想像してみてください。猫が好きなのであれば想像に難くないはずです。

 

 

野良猫を守るために最も重要なもののひとつにTNR活動があります。上でお話しした【かわいそうな命】を増やさないことを趣旨とした活動であることを前提としてお話ししていきます。

 

 

TNR活動とは

最近耳にすることも多くなったと思われる【TNR活動】という言葉の意味を解説します。

 

TRAP(トラップ)

捕獲する

 

NEUTER(ニューター)

中性化する(不妊・去勢手術を施す)

 

RETURN(リターン)

元いた場所に放つ

 

野良猫の増殖を防ぐことを目的として行われる活動です。それは保護団体が主体で行うこともあれば、地方自治体が貸し出ししている捕獲器を使って個人が行う場合などさまざまです。

 

捕獲した猫は動物病院で不妊・去勢手術を施され、そのしるしとして耳の先をカットされ『さくら猫』となります。市区町村によっては野良猫の不妊・去勢手術に対して助成金が援助されるところもあります。

 

この※『さくら猫』であることによって「これ以上増えない、人間に迷惑をかけない」ことの証明ができ、保健所による捕獲の対象から外れます。※カットした耳の形がさくらの花びらに見えることから命名

 

www.kurotsubame.com

 

残念なことにTNR活動が行き届いている地域は多くなく、行政による支援、保護団体やボランティア登録を受けた個人活動家の数も十分とはいえないのが現状です。

 

 

不妊・去勢手術にメリットはあるのか

不妊・去勢手術にはいくつかメリットがあります。野良猫と飼い猫に分けてメリットを挙げてみたいと思います。

 

野良猫の場合

・野良猫の数が増えない

・泌尿器系の病気リスクの軽減

・発情しなくなるため大きな声を上げ縄張り争いの喧嘩をしなくなる

 →けがも少なくなり長生きが可能になる

・おしっこの臭いが軽減される

 →近隣住民とのトラブルの原因を軽減できる

 

 

飼い猫の場合

・泌尿器系の病気リスクの軽減

 →健康で長生きできる可能性が高くなる

・発情しなくなるためマーキングのためのスプレー行為を減らせる(なくなるケースも)

・ツンとするおしっこの臭いがなくなる

 

 

 

不妊・去勢手術を受けた猫のその後

不妊・去勢手術を受けた野良猫は『さくら猫』となります。

 

 仔猫や、以前飼育されていたことがあるなどの理由で人に慣れている猫はリリースされることなく保護団体や預かりボランティア※の元にとどまり新しい飼い主(里親)を探すことになります。そして終生飼育を約束され、新しい家族の元で『一代限りの命を全うする』こととなるのです。

 

※預かりボランティアとは保護された猫を預かり里親が見つかるまでの間のお世話をするボランティア活動家のことです。

 

残念ながら人による飼育を受け付けない猫は『地域猫』としてリリースされ、【地域猫ボランティア】の手で管理され『一代限りの命を全うする』ことになります。

 

 

地域猫ボランティアとは

文字どおり『地域猫のお世話をするボランティア』です。市区町村の自治体ごとに開催される『地域猫ボランティア講習』を受講することでなることができます。

 

ほとんどの場合、無料で受講することができ2時間程度の講習を経て地域猫ボランティアとして活動することができるようになります。

 

おもな活動内容としては

・地域猫への餌やり

・地域猫の生活環境の保全(清掃など)

・近隣住民への理解と周知

・野良猫へのTNR

・飼い猫の遺棄を未然に防ぐパトロール

 などが挙げられます。

 

詳しくは体験記事があるので興味のある方は参照してください。

www.kurotsubame.com

 

 

野良猫に餌を与えてはいけない理由

TNRは猫の生殖機能を取り去ることだとお話ししました。生殖機能を奪うことに対して嫌悪感を抱く人がいまだに多いこともあり、倫理的な議論は継続して深めていかなくてはいけません。そういった部分も含め人と猫との関係は分岐点を迎えています。

 

お腹を空かせている猫にご飯をあげて何が悪い。そんな声が聞こえてきそうな気がしますが、無責任な餌やりは不幸な命を増やすのみです。

 

そもそも体の大きくない猫にとって出産は命がけで、文字どおり【命をすり減らせて】子供を産みます。仔猫を出産した後も母乳を与えるためにたくさんの栄養を必要としますし、仔猫を守るために外敵と戦ったり昼夜を問わず移動を繰り返さなくてはならなかったりと我々が想像するよりも猫の出産と育児は大変なことなのです。

 

それを可能にするのが人による『餌やり』です。豊富な栄養を得ると野良猫は繁殖行動を始めます。増えてしまった猫は糞尿被害の原因になったり、縄張り争いや発情による喧嘩の騒音被害を訴える近隣住民にとって厄介者になってしまいます。追い払うためにいじめられたり、保健所に通報されてしまえば捕獲され最悪の場合殺処分になってしまうこともあるのです。

 

ありがたいことに昨今は猫を保護する団体が増えてきたこと、保護された猫の飼い主になる人が増えてきたことなどの理由から猫の殺処分は減少傾向にあります。

 

しかし注目すべきは殺処分の数字だけではなく、その他の猫の死因にあります。外猫の死因で1番多いのは殺処分をはるかに超える数の『交通事故死』です。それも清掃局の職員がカウントできたものに限られます。実際には出ている数値よりも多いと言われています。

 

野良猫への無責任な餌やりは不幸な最後を迎える猫を増やすだけなのです。 

 

 

猫の繁殖能力について

【増える】とお話ししましたが具体的な数字がないとピンと来ない方もいると思いますので、猫の繁殖能力について書かせていただきます。

 

雄雌2匹の猫がいたとしましょう。

 

この2匹3年後には2000匹にまで増えるなんて想像ができるでしょうか。猫は生まれて6カ月くらいすると出産が可能になるとされ、1回の出産でで5~8匹を、さらに年に3~4回も出産をすることができます。

 

実際はカラスなどの外敵や食糧不足により自然淘汰されてしまうので、ここまでの数に爆発的に増えることはまれですが理論上は可能です。

 

野良猫のすべてが上に挙げた回数の出産をするわけではありませんが、豊富な餌により栄養状態がよくなったらどうでしょうか。その高い繁殖能力を思う存分発揮してみるみるうちに数を増やしていくことでしょう。

 

余談ですが、猫の交尾による妊娠確率は100%で、しかも複数匹の雄の子供を同時に身ごもることが可能です。

 

野良猫のコミュニティが巨大になればそのぶん高確率で雌の猫は発情の度に妊娠させられ、命をすり減らすようにして仔猫を産み続けることとなります。

 

・単純計算すると2匹の猫が3年後に2000匹にまで増える

・雌の猫は約6ヶ月齢から出産が可能に

・年3~4回、1回で5~8匹の出産が可能

 

 

 

増えすぎた猫の行く末

そうして母猫の命を吸い取りながら外敵の目をなんとか逃れて大きくなった猫が、交通事故であっけなくその生涯を終える想像をしてみてください。あるいは捕獲され保健所の狭い檻の中で生涯を終える姿を想像してみてください。

 

「猫がかわいそうだから」「すり寄ってきてかわいいから」などの理由で餌を与えてはいけません。結果がどうなるのかを知る必要があるのです。

 

 

 お腹をすかせている猫を放っておけない

僕も無類の猫好きなので、目の前にお腹をすかせている猫がいたらなんとかしてあげたい!と思います。それが【やさしさ】や【人情】というものでしょう。

 

その【やさしさ】や【人情】そのものは否定しません。猫が好きで何とかしてあげたいと思ってくれる方が一人でも多くなってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

 

ただ、『何が猫のためになり、ためにならないのか』を考えずに、やみくもに餌を与えることだけはしないで欲しいと切に願います。また、独りよがりの自己承認欲求を満たすための餌やり(なついてほしい、甘えてほしい、善いことをした)であってはならないとも考えています。

 

野良猫が増えると近隣住民とのトラブルに発展しかねないとお話ししましたが、それなら『野良猫』に『地域猫』もしくは『飼い猫』になってもらうという方法が最善であると考えています。そしてあなた自身も(近隣住民の目から見て)『迷惑な餌やり』から『地域猫ボランティア』になることができるのです。

 

不妊・去勢手術するお金がない」というのであれば自治体に掛け合ってみてください。すべてではないにせよ助成金が援助されるところも増えてきています。

 

捕獲しても動物病院に連れて行く手段(車など)がない」というのであれば、近くに猫の保護団体がないか探してみてください。きっと力になってくれるはずです。それだけでも十分に立派な『猫の保護活動』となります。

 

 

増える異常者

悲しいことに日々のストレスやうっぷんを猫にぶつける異常者が増えています。彼らはSNSやブログなどから野良猫の情報を入手すると出かけていって餌を与えるふりをして捕獲します。その後はなぶるように残酷な目にあわせたり、あっさり殺してしまったりします。なかには飼育している大型のは虫類や猛禽類の餌にするために野良猫を捕獲するという人間までいます。

 

記録する意味で写真を撮影するのは構いませんが、SNSやブログで公開することは猫にとって【危険をはらんでいる】ということを頭の片隅にとどめておいていただきたいと思います。

 

その1枚の写真がきっかけとなって、かわいがっていた猫が姿を消してしまうことにもなりかねないからです。 

 

 

おわりに

僕自身が2匹の保護猫と、保護した野良猫1匹とともに暮らす飼い主でもあります。一人一人の力は小さくとも、多くの人が【猫を守る活動】に積極的に参加するようになれば変え難い現実も変えていくことができると信じています。また、そのようにしてしか現実を打破していくことはできないという想いから、微力ながらもブログを通じて情報を発信しています。

 

地球全体から見れば『野良猫問題』は優先順位の決して高いものではないかもしれません。しかし『弱いものをないがしろにしない』ということが、本当の意味での【こころの豊かさ】の実現には必要不可欠なものに思えてならないのです。

 

  

 

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