悪魔の脳内再生係り
ピクサーの映画『インサイドヘッド』はとてもよくできた映画である。
日本語吹き替え番では竹内結子さんや大竹しのぶさんが幅のある声の名演技をして話題になったことが記憶に新しい方も多いのではないだろうか。
話の筋はというと、主人公の女の子の頭の中に住んでいる【喜び】や【悲しみ】【怒り】などの感情を擬人化したキャラクター達が迷路のような脳内世界を冒険し、現実世界でトラブルに直面してこころを閉ざしてしまいそうになる女の子を内面から支えて救っていくというものだ。
脳内世界をポップにときにコミカルに表現していて、子供にもわかりやすく記憶や感情の動きを可視化している本作では、日々の生活に起こりがちな『思い出し笑い』や『脳内再生』などの事象についてのユニークな描写が随所にありとても面白い。
今回は『脳内再生』についての記事である。
映画の中で脳内の記憶倉庫には管理人が住んでおり、ジュークボックスから1枚のレコードを選んで再生するかのごとく、その時々の感情に合わせて記憶の中にある映像や音楽を再生するのだ。
悲しいことがあるとそれにリンクする悲しい記憶が【再生され】フラッシュバックとしてよみがえり、退屈なときにはチューインガムのテレビコマーシャルの小唄などが再生されたりする。
擬人化され性格を有したこの【脳内再生係り】は気まぐれであるらしく、時として現実世界を生きる主人公を翻弄し、見ているこちら側を吹き出さずにはおかない。
脳内再生
皆様は過去にこんな体験をしたことはないだろうか?
あるときふと現実とは脈絡のないメロディが頭に浮かび、やめようと思っても無限に脳内で再生し続けるという呪いにも似た体験が。
これがいわゆる【脳内再生係り】の仕業だ。
自分の意思とは反して起こることから、潜在意識下の自分からのメッセージか、あるいはサブリミナル効果(すり込みによる記憶効果)により記憶させられたメロディないしは映像がなにかのきっかけで呼び起こされるかのいずれかであろうと推察する。
リトミックでこころの傷を癒やす
特定のメロディが有する周波数には人の気分や、こころの傷に効果的であることから研究が進められ、現在【リトミック】として広く普及している。
人類にとって最後の『未開の大地』といわれる脳の、まったくもって未知の機能が脳内から(その人にとって)リトミックとして効果を発揮し得るメロディが選別され再生されていたとしたらこれは大発見だろう。
と、真面目な話はここまでである。
悪魔の脳内再生係り
嫁の話になる。
嫁は超がつくほど几帳面で絵に描いたような【ザ・A型】である。食材の賞味期限やら猫の食事量に至るまでマメにメモをとり、きちんと整頓された部屋で過ごすことを好むしごくまともな人間である。
そして、【悪魔の脳内再生係り】をその頭の中に保有している。
何をもって【悪魔】かという理由は以下である。
・脈絡のなさが半端じゃない
・再生のゴリ押しが半端じゃない(しつこい)
・ときに(DJがディスクをキュッキュッとスクラッチするように)自動リミックスされる
・支離滅裂な歌詞が付与されることもある
・脳内にとどまらず歌わせる
これらがほぼ同時多発的に発動されるのである。しまいには訳の分からない歌を歌っている嫁のほうが爆笑するほどの圧倒的パワーの持ち主だ。
我が家を窮地に追いやった再生曲目3選
1:「スキパニパ」
グリコの笑顔推進のための歌らしいがなかなかの刷り込み力がある。
2:「iPhoneのアラーム音」
てててんてけてんて~
て~け~てんてんてん
というアレである。しかもエンドレス。歌詞もそのまま。これには非常に困った。
3:「新日本ハウスのCM曲」By吉幾三
芸人?なのだろうか、りんごちゃんという人がテレビに出てくるようになり久しく記憶の片隅に追いやられていたはずのあのメロディが帰ってきた。しかもソングBy吉幾三で再生されるからやっかいだ。
住みぬぁれだ~
我が家ぬぃ~
花の香りをそ~えで~
なんてずっとやってると、だんだんこちらの脳内再生係りも浸食されてしまい、最終的には釣られて合唱になってしまう。
おわりに
「なんで今その歌が流れる?」と聞くと
「さぁ、疲れてるからじゃないの?」と嫁は言う。
嫁の自己分析は及びの付かないところまで進んでいる模様。無意識に自分を【リトミック】しているという見解に着地したようだ。
‥
最後の「新日本ハウス」の歌は破壊力抜群なのでぜひ感染させたい人がいたら耳元でささやくように歌いかけてみてください。ま、白い目で見られたとしても保証はしませんのであしからず。
最後までお読みいただきありがとうございます。お付き合い下さった方の貴重な時間を消耗したとしたら平謝りするばかりです。